「歯を抜かない歯列矯正」その特徴と治療法、注意点とは?
「歯列矯正」というと、まずは「歯並びが悪い歯を抜く」というイメージがある方も多いのではないでしょうか。
しかし実は歯列矯正をする際に抜歯をしなくても良いケースもあり、自分の歯を大切に守り続けながら歯並びを整えることも可能です。
今回はこの「抜かない矯正」をテーマに、「非抜歯矯正」について紹介していきます。
非抜歯矯正とは文字通り、歯を抜かずに行う矯正です。矯正治療のためには歯を移動させるスペースを確保する必要があります。従来の矯正で抜歯が行われているのもそのためです。
では、なぜ歯を抜かないでも歯を移動させて歯並びを整えることができるのでしょうか?
抜歯以外の方法で歯を動かすためのスペースを確保することで、歯を抜かない矯正方法を可能としているからです。
抜歯を行わずに矯正をするための3つの方法を代表例としてご紹介します。
人間の歯は、親知らずを除くと28本あります。これらのうち上下左右に生えている1番奥にある歯をさらに奥に移動させ、歯全体を動かしやすくするためのスペースを確保します。1番奥に生えている歯を奥にずらすことが出来ればそれ以外の歯の調整が容易になってくるため、奥歯を移動させることが出来ないかを一番に確認する歯科医も少なくありません。
並んでいる歯をそのまま外側に拡大させていく方法です。こちらも歯茎のスペース確保が狙いで、歯全体を外側に広げることができるかどうかを考えていきます。歯列を拡大させていくという目的では「顎全体を拡げる」という方法もありますが、こちらも歯列矯正を抜歯なしで行うためのスペース確保が目的です。そもそも抜歯をする理由の1つにも、スペースの少ない歯茎にゆとりを持たせる点が目的となっているため、このような複数の方法で、適切な場所に歯を移動させるために歯茎そのものの間隔を作ることがポイントとなっています。
歯並びの凹凸が特に目立たない場合は、大きな歯を削って小さくさせることで間隔を空けるという方法があります。「歯を削ったとしてもそこまでスペースの確保につながるのか」と感じるかもしれませんが、例えば6本の前歯をそれぞれ1mm小さく出来れば、それだけで6mmものスペースができることになるのです。このように歯を削る方法は実は意外に歯茎のスペースを作るために有効な手段の1つなのです。
専門のドクターが、実際に患者様のお口のなかの状態や歯並びを見て、患者様の不安や疑問解消のために、お答えしていきます。 (初診時は矯正専門医ではありません。通常、院長が見ます。)
詳しい診断と矯正治療の計画を立てるために精密検査を行います。歯や顔の写真を撮ったり、あごの骨のレントゲン撮影、歯型取りなどとともに、顔と口もとのバランスを見たり、咬み合わせの検査などを行っていきます。
検査結果をもとに、今後の治療方針や期間、費用などを詳しくご説明します。患者さんお一人お一人のご希望を伺いながら、症状に合った治療方法や装置を話し合いながら決定していきます。
ムシ歯などがある場合には、装置を装着する前に治療しますし、抜歯の必要がある場合も装着前に抜歯を行います。
目的に合わせて装置を装着します。装着後はワイヤーの調節や歯の状態をチェックするために1ヵ月に1度程度の通院が必要です。
装置を外し、歯の表面のクリーニングを行います。
装置を外しましたら、歯が元の位置に戻るのを防止するためにリテーナーという保定装置をつけます最初の半年間が一番元に戻りやすいため、この期間中は一日中装置を付けます。約3ヶ月ごとには通院し、歯並びの状態をチェックします。
一通りの治療は上記で終了です。矯正治療が終わっても半年に1度は定期検診して、きれいになった歯並びや咬み合わせを維持していきます。
非抜歯矯正ができるかどうかは、患者さんのお口や顎の状況によります。では抜歯をせずに矯正することが可能な方はどんな特徴を持った人なのでしょうか?
歯列矯正をする際に重要になるポイントの1つに「顎の大きさ」があります。顎が狭くて歯が顎の中に並びきれない状態だと、歯並びがガタガタになったり八重歯になりやすくなるため、歯のスペースを確保するために抜歯が必要になるのです。もし顎に十分なスペースがあることが歯医者の診療などで分かった場合は、抜歯をしないで歯列矯正を行えるかどうかも併せて質問してみるのも良いでしょう。
抜歯をしない歯列矯正を行うために「顎を広げる」という治療を施す場合があります。顎が広がれば多少の凹凸しかない歯並びの場合なら綺麗に歯を並べることができるようになるのです。ところが歯並びが著しく悪い場合に無理して顎を広げる治療を行うと、歯が植えられている骨の外に出てしまい、矯正治療が終わった後に突然歯が揺れたり、歯の神経が死んでしまうことがあるのです。 このため歯並びが大きく乱れている場合はこの顎の拡張治療を行うことは難しくなるため、抜歯などの別の方法をとってから歯列矯正に入ることが一般的です。
一方で非抜歯矯正に向かないお口の特徴についてもご説明いたします。 非抜歯矯正が可能かどうかは、患者さんの口内や歯科医院の技術によってケースバイケースではありますが、以下のような特徴の方は向いていない可能性もあります。
これらが特徴となります。歯を抜かないで矯正できることは魅力的ではありますが、どんなお口でも非抜歯で矯正できますと安請け合いするのではなく、患者さんそれぞれのお口を診て最適な方法を提案できる、信頼できる歯科医を探すことが、後悔のない矯正治療への重要なポイントです。
非抜歯矯正に向いている方の特徴はわかったものの、ご自身がどうなのか、該当するのか、分からないという方も当然だと思います。まずは歯科医に口内を診てもらい、どのような状態なのかを把握していただくことが、矯正の第一歩です。
くろさき歯科では矯正をお考えの方に向けて無料相談も行っていますので、ご自身のお口が抜かない矯正に向いているのか、可能かどうかをチェックしてみてはいかがでしょうか。
健康的な歯を失わずに済むということ自体が嬉しいことではあると思いますが、歯を失わないことによってどのようなメリットがあるのかを更に掘り下げてご説明いたします。
歯を抜くということは食べる、消化する、言葉を発するといった人間の根本的な働きに影響を与えますし、身体全体の調子にも関わると言われています。 歯を抜かずに矯正することで、歯の機能や身体の調子を損なうリスクを減らして、歯並びを整えることが可能となります。 抜歯をする必要がない場合は、それだけ身体に負担が掛かることもありませんから、将来のことを考えるとやはり無理に抜歯しないようにしたいものです。
イメージとして「歯を抜くから矯正が早く終わる」と感じている方も多いかもしれませんが、実は歯を抜かない矯正の方が早く矯正が終わるケースも多くあります。これは抜歯を伴った矯正は、歯を抜くことから必要以上に大きなスペースが生まれてしまい、その空いたスペースに歯を移動することに時間が掛かることもあるからです。
抜歯する歯の決め方はその患者とのコミュニケーションで決める部分もあるため、人や状況によってさまざまです。そのためコミュニケーション不足で本来抜く必要のなかった歯を抜いてしまうということもあり、歯を動かすために必要以上に時間がかかってしまうこともあります。
非抜歯矯正の一例として、くろさき歯科で実施しているミューという方法では、全ての歯をまとめて動かすことにより、従来の方法なら早くて2年半・長いと5年もかかってしまうところを、長くても2年・早ければ半年という短期間での矯正を可能としています。 短期間で矯正を行うために、非抜歯矯正という選択肢を検討いただくと共に、歯科医師としっかりと相談することも重要となります。
厚生労働省と日本歯科医師会では「80歳になっても自分の歯を20本以上保てるようにしよう」ということをテーマにした「8020運動(ハチマルニイマルうんどう)」という活動を進めています。 ある医学的なデータによると「たとえ高齢者になったとしても、自分の歯が20本以上あれば、堅い食べ物でも噛み砕けるため、充実した食生活を続けることができる」というものがあります。 こういった事例からも自分の歯は極力減らさずに、自分の歯のメンテナンスを続けられるようにした方が、先のことを見据えて考えてみると得である可能性が高いのです。
もちろん歯列矯正の時に抜歯を行う場合は、歯科医師が細心の注意を払って抜歯を行うかどうかを決めているため、抜歯を行ったからといって噛み合わせに直接的に影響がある訳ではありません。しかしそこから数十年後、歯や顎が弱ってしまった時に、1本1本の歯に負担がかかりやすくなって、若い時に安易に抜歯をしたことを後悔してしまうかもしれません。
このような例からも、できる限り今ある歯を大切に保てるような心がけが重要になっていると言えるでしょう。
歯を抜かず、スペースがないまま無理やり歯を矯正してしまうと、若干横顔の口元に突出感を覚えたり、口が閉じづらくなる可能性があります。これによって歯並びは良くなっても口元の見栄えが悪くなってしまうという可能性もあります。 医師は顎の骨格や歯の大きさ、歯茎のスペースにどれだけ余裕があるかなど、複数の観点から抜歯が必要かを確認していますが、その際に歯を外側に移動させても差し支えがないかも調べているのです。難しい場合は抜歯などを活用した外科手術が必要になりますが、一般的に問題がないようなら歯を抜かないで矯正治療に入ります。もしどうしても心配な方は事前に歯科医の方とよく相談しておくようにしましょう。
歯を抜かない矯正を行った場合、抜歯を行った矯正と比べて矯正した歯が元に戻りやすいという話があります。
そもそも歯並びが悪くなるという原因の1つに「日常的な生活スタイル」があるのですが、例えば頬杖をつく癖があるなど、舌や頬に負担がかかりやすい生活を送っていると歯並びが悪くなっていくのです。
先ほども説明しましたが、抜歯を伴わない矯正を行う場合は歯茎のスペースを確保するための手段に「歯列を外側に拡げる」というものがあります。ところが患者の無意識な癖によってはせっかく外側に広げた歯並びが元に戻ってしまう、いわゆる「後戻り」を引き起こしやすいという傾向があるのです。
歯を抜かない矯正では歯列を拡げる治療を行いますが、極端に歯列を拡げてしまうと患者の噛み合わせに悪影響を及ぼしてしまうリスクがあります。 私たちは上顎の歯と下顎の歯が適切な位置で噛み合っているため、ストレスのない噛み合わせが構成出来ています。ところがそれを人工的に拡げてしまうことで本来その患者に備わっていた「噛む」機能を低下させてしまうリスクがあるのです。こうなるとそこから更に顔が歪んでしまう原因につながったり、顎関節症を発生させてしまう可能性もあるため、噛み合わせに関しては医師としっかりとコミュニケーションを取っておくようにしましょう。
歯を抜かない矯正と「歯周病」というと、直接的な関係はあまり無いように感じがちですが、実は無理な歯を抜かない矯正を行ってしまうことで歯茎に悪影響を与えてしまう可能性があります。
前述した「噛む」という内容にも当てはまることですが、私たちの歯は歯槽骨という骨に支えられており、その骨が適切な場所に位置していることで力強く食べ物を噛むことができるようになります。ところが歯列矯正を行った際に歯列のスペース確保のために歯を外側に移動させてしまうことで、歯槽骨から歯が前にはみ出るようになる場合があります。本来骨で支えられていた歯が前方に飛び出てしまうことで歯の根っこを包んでいた歯茎にも負担がかかり、歯茎が下がりがちになってしまうことから、そこが原因で歯周病につながる可能性もあるのです。
このように、非抜歯矯正にはメリットだけではなくデメリットやリスクもあるものです。
「抜歯をしたくないから」と安易に歯を抜かない矯正を選ぶのではなく、また「歯を抜かないで矯正ができますよ!」という医師の言葉も鵜呑みにせず一度医師に相談することが大切です。
信頼できる矯正医師は「抜歯と非抜歯、どちらが効果的か」を事前しっかりと話してくれる傾向があるため、ご自身の歯列状況や生活習慣などをしっかりと共有しておくようにしましょう。
矯正にかかる器具や治療などを含めると70万~100万円前後の費用はかかります。その他にも更に10万円前後のレントゲン写真の撮影や検査料なども別途かかってくるため、やはりある程度のまとまった費用は必要だと考えておくべきでしょう。
また非抜歯矯正では抜歯の費用はかかりません。抜歯の費用は1本につき大体5000円~1万円程度とされているため、上下左右で4本抜くとなると4万円の節約になることにもなります。非抜歯矯正で治療を進めていく場合はこの費用が一切かかりません。
抜歯による従来の矯正の相場も同程度ですので、抜歯か非抜歯かは費用ではなく、メリットデメリットを考えてご自身に適したものを選択することをお勧めします。
矯正治療は長期間にわたるもので、当初とは話と違い追加の費用で総額が膨れ上がってしまった、といったトラブルが残念ながら起きてしまうこともあると聞きます。
くろさき歯科では、初回の無料相談の際に治療計画や費用についてしっかりとご説明し、納得いただいてから治療に入ります。
安心して治療に専念していただくためにも、治療内容はもちろん費用の面でも不明な点や不安なことは1つ残らずご相談ください。
永久歯に対して歯列矯正を施す場合は、一度抜いてしまうともう元通りの歯に戻すことはできません。歯列矯正が終わった直後は問題なく生活ができるかもしれませんが、10年、20年経ってしまうとそれが負担になってしまい、歯に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。 このような側面を考えるとやはり可能であれば抜歯を行わない、非抜歯矯正が行えるのであれば極力取り入れることがお勧めです。
もちろん非抜歯矯正にもデメリットは存在しています。医師としっかりとコミュニケーションを取れないと、後戻りや顎関節症、歯周病などの問題を引き起こしてしまうこともあるため、信頼関係を築ける医師に矯正を依頼することがポイントです。
歯列矯正というと歯並びの良さを追求することが主目的となりがちですが、審美という観点で美しいことはもちろんのこと、正しい噛み合わせが維持できるなど日常生活に支障をきたさないことも重要です。
医師と相談し、抜歯なしで綺麗な矯正が可能だということが分かったのなら、高齢になっても自分の歯でいられるように、抜歯をしない矯正も検討してみてはいかがでしょうか。
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